ITによる業務の高度化とは

ITによる業務の高度化とは、「コンピュータ」(大量の情報を超高速で間違いなく演算する能力)と「通信」(物理的な距離に関係なく情報を交換できる仕組み)を極限までに活かし、企業が革新する事を示します。

経営側から見るとITにより業務の高度化を進めると「経営に必要な情報」を「経営が必要な時に見ることが可能」であり、経営判断を「経営者が必要な時」に「経営者の裁量で行う」ことができるようになります。

経営としてはITを使わなければ駄目だと言う事ではなく、経営のために業務を高度化するのに最適な道具として現在ではITが「機能的」にも「コスト的」にも最適なので今は選択していると言えます。

ITによる業務の高度化の例

業務の高度化について、多くの企業でも行われている在庫管理を例に具体的に示します。各レベルに応じた特徴と実際の典型的な業務について例示します。

手法 特徴 在庫管理を例にした状況

高度化レベル 0

(紙)

人間の記憶により限界を超える事ができない。

人間の処理速度を超える事ができない。

他のデータとの連携が出来ず、人間がデータ連携を頭で考える必要がある。

業務さえ処理できれば良いので、ITに対する人材の追加は不要。

番頭が在庫のデータを紙で管理している。

  1. 番頭が休むと業務が回らなくなる。人により実行方法が微妙に違うだけで数が合わなくなる。
  2. 在庫を管理できる数は、番頭の能力による。
  3. 販売や帳簿との連携は番頭さんが行う。

結論:人間の処理能力に依存し、能力を超えるとミスが頻発し業務が崩壊する。

高度化レベル 1

(表計算ソフト)

個人が持つパソコン・ソフトウェアの制限までデータを持つ事ができる。(数万レコード程度)

個人が持つパソコンレベル程度まで処理できる。業務を処理中は自分のパソコンが使えない。

表管理ソフトで簡単な連携はできる。しかしリンクの間違いや個人が作ったレベルのプログラムの場合にはデータを誤る可能性が高い。

ITが趣味程度で好きな人でも対応可能であり、書面などを残してチームで対応する必要が無い。

在庫の担当者がエクセルで管理してみた。

  1. 管理者がデータ入力を行う。簡単なプログラムや制限により入力制限できるように管理者が作りこむ。
  2. 在庫を管理できる数は、番頭の能力による。
  3. 個人が作りこんだプログラムなので、他の人が他のセルのデータ制限をしたくても対応できない。
  4. 会計システムが新しいソフトに更新された。しかし在庫のエクセルとの連携は考えられていなかったため、エクセルのマクロを変更しなければならなかった。しかし作った人は既に退職しており対応できなかった。

結果:個人レベルで作りこまれて業務の改善等に対応できない。

高度化レベル 2

(自社サーバ)

業務に必要な量・性能をプロが選定している。また能力が不足しても追加を行う事ができる。

業務に必要な処理能能力をプロが選定している。処理能力が不足してもハードウェアの増強や並列処理により対応が可能である。

ITのプロが必要なデータを連携することを前提として設計されてている。業務側から新たな連携が必要になった場合にはITのプロが連携を考える。

システムの構築・維持に外部のベンダーに支払う費用も大きい。しかしそれ以上に内部の人材に払う費用が莫大となる。

業務を理解した社内の情報システム部門のプロが設計し外部のベンダーが構築を行う。保守も同様に行われている。

  1. 決まった業務フローで、業務を行っている担当者が入力を間違えないように作られている。
  2. 在庫を管理できる量は、業務に必要なだけ準備が可能である。
  3. 情報システム部門が設計し外部ベンダーが構築しているため、業務を改善する場合には合わせてシステムも改善できる。

更に 高度化レベル2の中でも 進化

  1. 無線タグ・QRコードと連携し輸送・入庫・販売・出荷まで人間がデータ入力を行う部分を可能な範囲で亡くし、ミスを防ぐ。
  2. リアルタイムで入力される統合したデータから、経営に必要な情報や経営予想を行うダッシュボードに表示させ、経営判断が直ぐに行える状態となる。

結果:社内の優れた人員・優れた外部ベンダーが居れば経営のために業務をITで高度化する事ができる。ただしコストは非常に高額になる。

高度化レベル 3

(クラウド)

業務に必要な量・性能をプロが選定している。また能力が不足しても追加を簡単に行う事ができる。

業務に必要な処理能能力をプロが選定している。処理能力が不足してもハードウェアの増強が簡単に行える。

クラウド側で事前に準備されたソフトウェアは連携を前提に作られている事が非常に多い。

初期費は自社サーバに比べて段違いの安さになる。また設計を適切に行えば、毎月の支払いも使用した分だけとなる。

業務を理解した社内の情報システム部門のプロが設計しクラウドに準備されたアプリケーションを駆使して業務を行う。システムの保守はクラウド側で行われるため気にする必要が無い。

  1. 多くの業務で適用できるセットされた業務フローと多少のアプリケーション開発で、業務を行っている担当者が入力を間違えないように直ぐに業務を開始できる。
  2. 在庫を管理できる量は、業務に必要なだけ準備が可能である。
  3. 多くの業務で適用できるセットされた業務フローとアプリケーションが、適宜自動的に追加されていく。

更に 高度化レベル3の中でも 進化

  1. 無線タグ・QRコードと連携し輸送・入庫・販売・出荷まで人間がデータ入力を行う部分を可能な範囲で亡くし、ミスを防ぐアプリケーションがクラウド側に自動的に追加されていく。
  2. リアルタイムで入力される統合したデータから、経営に必要な情報や経営予想を行うダッシュボードに表示させ、経営判断が直ぐに行える状態となる。

結果:社内の優れた人員が居れば経営のために業務をITで高度化する事ができる。コストも自社で所有するよりも安価になる。ただしクラウドを自社の業務に合わせていく手法が別の技能として必要になる。

業務の高度化による比較(例)

業務の高度化が経営にどのような差になって現れるか、類似した商品を取り扱っている別企業の在庫管理において比較してみます。

経営・業務が求める機能

高度化レベル1

表計算ソフトによる在庫管理

高度化レベル2

自社サーバのアプリによる在庫管理

正確性

在庫データは経営の重要なデータなので確実な情報を知りたい。

  1. 手による入力のため間違いが発生しやすい。

結果的に在庫データを業務が間違え、出荷できない等の顧客の信頼を損なう事態が発生しやすい。

  1. 発注システムのマスターと連携を取っているため、手による入力を行う必要が無い。
  2. 在庫に入る場合にもRFIDやQRコードのスキャンで人のミスが発生しにくい。

結果的に在庫数を業務が間違える事は少ない。

リアルタイム性

在庫データは経営の重要データなので常に最新の情報を知りたい。

×

  1. 手による入力のため在庫データの更新が遅れがちになる。
  2. 間違いを発見した場合にも手による調整などが行われ、本当の在庫数を把握するのに時間が必要になる。

結果的に在庫データを経営がリアルタイムに読み取れずに、経営判断が遅れる。

  1. QRコードやRFIDによりリアルタイムで在庫の状態が分かる。
  2. 在庫の棚卸もマスターがはっきりしているので短時間で在庫を区切りながら処理できる。

結果的に在庫データをリアルタイムに把握できるため、余剰の在庫を持たず経営判断に従った出荷ができる。

拡張性

複数に分散した倉庫の在庫を管理したい。

×

  1. 倉庫別に在庫の管理方法が違い、会社としての在庫の結果を知りたいが手による再集計のため非常に時間がかかり間違いが頻発する。

結果的に業績が向上したので倉庫を追加したが、在庫データを経営がリアルタイムに読み取れずに、経営が悪くなる。

  1. 倉庫が分離しても一つのシステムで統合されているので在庫の集計も変わらず行える。
  2. 全ての倉庫で管理手法が同じためミスが発生しにくい。

結果的に業績が向上したので倉庫を追加した事が経営にとってプラスに働く。

同じ商品を扱っていた場合に、業務をITで高度化している企業が間違いなくライバル企業に勝ちやすい状況である事は一目瞭然です。商品自体は各企業が長年の努力の競争で高い品質を維持しているとしたら業務の高度化が勝敗を分けると言えるでしょう。

経営のために業務をITで高度化できる企業とできないケースがあるのは何故でしょうか?